EC業界の規模感と
ビジネスモデル、
ECサイトのタイプを解説
2010年代以降、EC業界の市場規模は拡大しつづけています。今後は業界・企業規模・業態にかかわらず、ECを視野に入れたビジネスモデルが必要になるかもしれません。ECには複数のビジネスモデルがあり、ビジネスモデルに適したECサイトのタイプがあります。したがって、自社のビジネスに即したEC戦略が必要です。ここでは、EC戦略の参考情報として、EC業界の規模感やビジネスモデルの違い、ECサイトのタイプについて解説しています。
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1. ECの定義と業界の規模感
ECは「electronic commerce」の頭文字をとった略語であり、日本語では「電子商取引」と翻訳されます。一般的には、「コンピュータネットワークを介して行われる売買」がECの定義と考えて良いでしょう。
ECには主に4つのビジネスモデルがあり、以下のような特徴を持っています。
BtoC
(Business to Consumer)
企業と個人(一般消費者)の取引を基本としたビジネスモデルです。衣料品や食料品など生活に結び付いたものが多く、取引金額も小さいことが特徴です。近年は大規模なECプラットフォームだけではなく、企業が独自で運営するECサイトの成功事例も増えています。
BtoB
(Business to Business)
企業同士の取引を前提としたビジネスモデルです。BtoCよりも市場規模が大きく、日本国内のEC市場はその大半がBtoBによって占められています。クローズドなネットワークで受発注情報をやり取りするEDI(Electronic Data Interchange)から、BtoB向けECサイトへ移行する事例が増えており、今後も市場は拡大していくと考えられます。
CtoC
(Consumer to Consumer)
いわゆる「個人間取引」をインターネット経由で行う場合のビジネスモデルで、フリーマーケットサイトやオークションサイトが代表的な例です。企業は取引の場(プラットフォーム)を提供するにとどまり、売買には関与しません。
DtoC
(Direct-to-Consumer)
DtoCは、端的に言えば「インターネットを介した製造直販」です。従来は卸業者や小売店を通じて一般消費者に提供していた製品を、製造元が直接、自社ECサイトで販売するといった事例が該当します。DtoCはECサイトや運用体制構築にコストがかかるものの、顧客データの蓄積による製品の改善・販路拡大・ファン層の獲得・中間コストの削減など複数のメリットがあるため、近年注目されているビジネスモデルです。
2. EC業界の規模感
次に、総務省のデータをもとにEC業界の規模感を見ていきましょう。なお、ここで使用しているデータは令和2年時点のものです。
・BtoC……19.3兆円
(前年19.4兆円、前年比0.43%減)
・BtoB……334.9兆円
(前年353.0兆円、前年比5.1%減)
・CtoC……1兆9586億円
(前年1兆7407億円、前年比12.5%)
このようにECの市場規模はBtoBが非常に大きい(BtoCの19倍)ことがわかります。従来型の電子商取引(EDIやEOS)が広く普及したことや、自社運営によるECサイトが増えたことなどが影響していると考えて良いでしょう。
市場全体を俯瞰すると、令和2年ベースでは新型コロナウィルスの影響から微減傾向が確認されます。ただし、前年とほぼ同一の水準を維持しており、過去数年の流れから未だに拡大傾向であることが推測されます。また、EC化率(全取引に占めるECの割合)は、BtoCで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoBで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加していることも見逃せません。
コロナ禍でも底堅いEC
2021年時点の状況を整理すると、EC市場全体としてはコロナ禍が必ずしもマイナスになっていないことがわかります。具体的には、外出自粛や三密の回避で巣ごもり需要が増え、生活雑貨や家電、PC周辺機器の取引が増加しました。また、電子出版やゲーム、音楽、動画などデジタルコンテンツの購入も増加しており、旅行や外食サービスの落ち込みを相殺している状況です。BtoCに限定すれば、「購入される品目が変化したものの、EC業界全体としてはダメージがほとんどない」とも言えるでしょう。
一方、BtoBは前年比で5%以上の落ち込みですが、相変わらず高いEC化率を維持しており、今後もEC化のトレンドは続く見込みです。
参考:
経済産業省 電子商取引に関する市場調査 同報告書
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf
3. ECサイトのタイプ
このようにEC業界全体が底堅く推移し続ける中で、ECサイトの役割も拡大しています。
そこで、ビジネスモデルごとにECサイトのタイプを整理してみましょう。
BtoC向けECサイト
BtoC向けECサイトとしては、大手ECプラットフォームへ出店する「モール型」と、独自にECサイトを構築する「単店舗型」が挙げられます。また、単店舗の構築方法は「フルスクラッチ」や「パッケージソリューション」「SaaS」などがあります。
近年は、モール型への出店で認知拡大を図りつつ、自社ECサイトの露出を増やしていくといった戦略が一般的です。
BtoB向けECサイト
従来の卸業者・法人向け販売をECで提供するサイトです。具体的には「クローズドBtoB型」、「スモールBtoB型」の2タイプが存在します。クローズドBtoB型は、既存顧客のみが使用できるECサイトで、一般には公開されません。得意先ごとに商品価格や品目が異なり、与信管理によって決済可能額が決定されています。また、EDIやEOSによる処理にも対応していることが特徴です。これに対してスモールBtoB型は、インターネット上に一般公開されているECサイトで、取引実績を持たない顧客も自由に購入することができます。また、価格や品目の差もないため、新規取引のハードルが低いことが特徴です。近年は、新規顧客や見込み客の獲得が容易なスモールBtoB型が一般化しつつあります。
CtoC向けECサイト
いわゆる「フリマサイト」「オークションサイト」が代表例です。厳密に言えばECサイトではなく、出品と取引を管理するプラットフォーマーと言えるでしょう。品目や顧客の管理は行わず、決済関連機能などプラットフォームの運営のみを担います。
DtoC向けECサイト
「製造直販のEC化」であるDtoC向けECサイトは、化粧品・衣料などの分野で成功事例が多いです。卸や小売りを挟まないため利益率が高く、中間コストの圧縮を価格に反映させて競争力を高めることもできます。ただし、顧客とのコミュニケーションやデータ分析、マーケティング、ブランディングなどを社内で行う必要があり、安定運用にはノウハウが必要です。
4. ECサイトのトレンド
ECサイト構築では、上記4つのタイプに加えて「オムニチャネル化」「越境EC対応」といったトレンドを考慮する必要があるでしょう。
オムニチャネル型ECサイト
オムニチャネル型ECサイトは、ECサイトにオムニチャネルの要素を組み入れたものです。ここで言うオムニチャネルの要素とは「SNS、メール、実店舗、アプリケーションなど複数の顧客接点を活用し、在庫統合や顧客情報の一元化を進め、質の高い購入体験を提供する」ことを指します。オムニチャネル化は多様化するニーズに対応しつつ、ECサイトを成長させる施策として注目されています。OMOやO2Oなど新しいビジネスモデルの基点にもなるため、初期構築の段階でオムニチャネルに対応することが望ましいでしょう。
越境EC化
越境EC化は、グローバル対応や新規市場の開拓に強みを持つ施策です。インターネットを介して海外の顧客層と容易に取引できるほか、国内で積み上げた実績・ノウハウを活用して新たなブランドを確立することも可能です。ただし、越境EC化では多言語・多通貨対応やコミュニケーション、決済と配送方法など複数の課題が生じるため、外部からノウハウを取り入れることも検討していきましょう。
5. まとめ
この記事では、EC業界の規模やビジネスモデル、ECサイトのタイプなどを解説してきました。EC化率の伸びからもわかるように、ECは企業における販売戦略の柱になっていくと考えられます。また、コロナ禍の終息後もオンラインシフトが続くとの見方もあるため、ECサイトが収益に与える影響は一層大きくなると予想されます。ECサイトをスムーズに立ち上げるために、まずはECサイト構築のノウハウを持ったベンダーへの相談を進めてみてはいかがでしょうか。
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また、小売業に特化したSIerとして多くの実績と幅広いノウハウ・知見があります。
ECサイト構築、システム開発の際はぜひご相談ください。
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