的確な提案を引き出すRFPの書き方とは
RFPとは「Request for Proposal」のことで、日本語では「提案依頼書」と呼ばれる文書です。IT業界では発注元企業が外部のベンダーへ提案を依頼する際に発行されます。ITプロジェクトの成否は的確なベンダー選定にかかっているといっても過言ではありません。ベンダーの強みを理解し、最適な提案を引き出すためにも、RFPの書き方についてもう一度確認しておきましょう。
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1. DX時代に重要さを増すRFP
日本企業の多くがDXを意識する時代になり、RFPは以前にもまして重要な文書として位置づけられています。そこでまずは、RFPの役割についておさらいしておきましょう。
RFPの役割
一般的にRFPは、ベンダー選定のための材料(=提案)を得るためのものです。発注元企業は、RFPに何を・いつまでに・どの程度の予算で求めているかを記載し、RFPを受け取ったベンダーはその内容に応じて提案を行います。現状、日本企業のITシステムは100%内製で構築されることは稀であり、大半は外部のベンダーの協力のもとに造られています。そのため、ベンダー選定はITシステムの質を左右する重要なフェーズです。このベンダー選定で失敗しないためには、的を射たRFPの作成が欠かせません。
ちなみにRFPと共に発行される文書に、「RFI(Request For Information=情報提供依頼書)」があります。RFIはベンダーに対して企業としての情報・実績・取り扱い製品などの開示を求める文書です。ただし近年は、RFIを企業の公式サイトから得られる情報で代用するケースも多く、RFPがベンダー選定の実質的な起点となっています。
RFPはITプロジェクトの起点
このようにITプロジェクトが開始される前に発行されるRFPですが、DX時代に入り、その重要性が増しています。DXとは端的に言えば「デジタル技術による新たなビジネスモデル構築や組織改革を可能とする土壌づくり」です。この土壌には先進的な技術を盛り込んだITシステムが含まれます。こうした流れを受けてITシステムは多機能化・高機能化が進んでおり、専門領域別にベンダーを選定するマルチベンダー体制が広まっています。
つまり、現代のRFPでは、複数のベンダーに対して要件を的確に伝え、最適な提案を引き出す必要があるのです。このことから、以前に比べて「ITプロジェクトの起点としての役割」が強まっていると考えられます。
2. RFPの書き方と注力すべきポイント
次に、実際にRFPの書き方について解説します。RFPのフォーマットは企業や業界によって異なるため、必須項目や注力すべき項目をピックアップしています。
RFPの構成
・プロジェクト概要
プロジェクト概要には、プロジェクトの背景や中長期のシステム改修の方向性などを記載します。また、「在庫保管コストの削減」や「EC機能の強化」など、ITシステムの活用で何を得たいかを具体的に記すことも大切です。
・プロジェクトの目的
プロジェクトの目的には、ITシステムの構築・改修の先にあるメリットを記載します。具体的には「リアルタイムなデータ連携による意思決定の迅速化」「顧客満足度の向上による契約率の改善」などが挙げられるでしょう。また、現状のシステム構成と希望するシステム構成を比較し(AS Is、To Be比較)、改善したい点を明確にしておきたいところです。
・業務およびシステム概要
プロジェクトの目的で提示したシステム図をより具体的に、現場の業務レベルとの関係が分かるように記載します。技術的な内容を含めつつ、業務レベルで必要とされる機能や、追加したい機能などを漏れなく列挙することを心がけましょう。
・開発条件
開発条件には、「想定する開発言語、開発環境」「開発工数の目安」「開発期間の目安」「開発用機器の負担割合」などを明記します。
・提案依頼事項
提案依頼事項はRFPの核ともいえる項目です。一般的には、次のような項目が含まれます。
→提案依頼概要(提案システム概要)
ベンダーに対し、どのようなシステムが提案可能かを求める項目です。設計・開発・テストなど「実現方法」が具体的にわかるように提案を求めます。また、提案するシステムの全体図や現行システムとの関連、差異が明らかになるような提案を求めることも大切です。
→スケジュール、コスト
契約締結から研修までのスケジュールとコスト、各工程におけるマイルストーンや定例報告会の頻度、フェーズごとの成果物の定義などの提案を求めます。
→機能要求と非機能要求
「貴社からの提案によって提供される機能、および非機能、その実現方式を記載すること」といった内容を記載します。
→開発体制
開発に携わる要員の数や連絡体制、機密情報の管理方法などの記載を求めます。
・提案手続き
提案手続きでは、提案に参加するための条件や提案のスケジュール、RFP説明会、選考結果の連絡予定日などの日程を列挙します。提案書の書式(紙、CD-ROMなど媒体の指定を含む)が決まっている場合は、その旨も明記しておきましょう。
プロジェクトを成功に導くRFPの書き方とは
ベンダー選定の失敗を防ぐために、以下2つのポイントを押さえたRFPの作成を心がけましょう。
・網羅性と具体性を両立させる
RFPには、網羅性と具体性が求められます。前述の構成に含まれる項目は必ず含め、なおかつ、ベンダーが具体的な提案を提出しやすいような内容を心がけましょう。具体性については、日常的にシステムを使用する社員やユーザーの声を吸い上げた内容が望ましいです。もし不安があれば、RFPを作成した後に社内でレビューの機会を設けると良いかもしれません。
・現状と未来を正しく伝える
ベンダー側は「今どういう状態で、将来的に何がしたいのか」が具体的であるほど、的を射た提案がしやすくなります。そのために、発注元が想定する「現状(AS Is)とあるべき姿(To Be)」を、業務・技術の両面から正しく伝えることが大切です。
3. RFP作成をボトルネックにしないために
ここまでの内容からも分かるように、質の高いRFPの作成には調査やヒアリングなど一定の労力が必要です。一般的にITプロジェクトは、ターゲットが広くなるほど事前調査の労力が増えていきます。
また、社内の業務・システム両面に精通しており、網羅的に調査する人材がいない場合、RFPをうまく書くことができない可能性もあります。その結果、ベンダーから的確な提案を引き出すことができなかったり、想定とは異なる力量のベンダーを選んでしまったりと、さまざまなリスクが発生します。
こうしたリスクを回避するために、専門的なノウハウを持つIT企業にRFPの作成を依頼することも検討していきましょう。
VINXでは、小売業向けのITシステム構築・運用を通じて蓄積したノウハウをもとに、RFP作成のコンサルティングサービスを提供中です。IT戦略や情シス業務の改善方針をもとに要求事項をとりまとめ、質の高いRFPの策定を支援します。
4. まとめ
ここでは、RFPの役割や構成、作成時のポイントについて解説してきました。近年、DXを想定し、自動化や効率化を含むシステム構築・改修が増えています。これら難易度の高いITプロジェクトを成功させるには、ベンダーから的確な提案を引き出し、具現化する力が必須です。もし、社内にRFP作成のためのリソースが不足している場合は、専門サービスの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
VINXでは、小売業向け情報システム部門コンサルティングサービスとして、IT化計画などのコア業務からシステムの構築、運用保守などの定常業務まで、ワンストップでご支援します。
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