【2022年版】IT人材戦略のトレンドとは?
ビジネスにおけるITの重要度が増す中で、IT人材の確保に苦心する企業が少なくありません。特に近年は、DX対応を任せられる人材の不足が顕在化しています。また、IT人材の不足からプロジェクト自体が進まないというケースも散見されます。このような中、企業は今後どのような人材戦略を採用すべきなのでしょうか。ここでは、企業が今後確保すべきIT人材のタイプや、IT人材戦略全体について解説していきます。
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1. プロジェクト推進におけるボトルネック「人材とスキルの不足」
冒頭でも述べたように、現在多くの企業でIT人材の不足がDX推進のボトルネックになっています。これは、人材の「数」だけではなく、「スキル」の面でも同様のことが言えます。
求められる人材のタイプ
日本IT団体連盟の調査によれば、先端IT人材のうち、特に重要度が高いものとして「DX」「サイバーセキュリティ」「エンタープライズIT」「AI」などが挙げられています。※1
これらは、DXを前提とした国際的な調査の結果から導き出されたものであり、日本でも今後ますます必要とされる人材であることは間違いありません。
ちなみに、総務省の「令和3年版 情報通信白書」によれば、DXは、
“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”※2
と定義されています。この定義に準ずれば、「第3のプラットフォームに対応できる人材」「ICTを活用して新しいサービス、ビジネスモデルを確立できる人材」「顧客体験価値を高める施策を立案できる人材」などが求められると言えそうです。
企業規模が大きくなるほど不足感は増大
このように多様なITスキル・ビジネススキルを持つ人材が必要になる一方で、企業では人材の不足感が強まっています。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会が公表している「企業IT動向調査2022」によれば、全体の約47%が「IT人材、スキルの不足」がボトルネックであると回答しています。さらに、売上別に回答を見ていくと、売上1000億円以上の大企業では、実に約6割がボトルネックであると回答しています。※3
加えて、ITコンサルティングファームであるアクセンチュアのサーベイでも「適切なスキルを持った人材がいない」という回答が最多という結果です。※4
これら複数の調査からも、IT人材の数とスキルの不足が、DX推進の足かせになっていることがわかります。また、企業規模が大きくなるほどに不足感も増大しており、豊富な人的リソースを持つ大手企業でさえもIT人材の不足に悩まされている実情が見えてきます。
2. 今後求められるIT人材戦略とは?
では、IT人材の数とスキルを補うための人材戦略を考えてみましょう。DX時代を見据えたIT人材戦略としては、下記が挙げられます。
ジョブ型人材の育成、採用
IT人材の数とスキルを補うための第一歩として挙げられるのが「ジョブ型人材」です。ジョブ型人材とは、特定の職務を遂行できるスキル・経験を持った人材です。いわゆるスペシャリストや専門職から、さらに具体化・細分化した人材とも言えるでしょう。IT人材は専門スキルを持つことが前提です。したがって、ジョブ型人材と親和性が高く、ジョブ型人材の育成・採用を強化することがIT人材戦略の基本と言えそうです。
ジョブ型人材の育成・採用にあたっては、まず社内のIT戦略を整理し、ジョブ型の人材要件を明確にすることが必要です。具体的には、DX 推進のための役割やタスクを定義し、そこから人材モデルを作り、必要なスキルの習得やスキルに特化した人材を採用するといった戦略が有効だと考えられます。ちなみに人材モデルの作成には、IPA(情報処理推進機構)が提供している「i コンピテンシディクショナリ(iDC)」によるスキル分類が役立ちます。
プロファイルベースの人材戦略
「プロファイルベースの人材戦略」も有望視されています。プロファイルベースの人材戦略とは、従来の「スキルベースの人材戦略」とは一線を画すものです。IT分野のリサーチ・助言を手掛けるガートナー社は、プロファイリングベースのアプローチを以下のように定義しています。
“ITスキルだけでなく、プロジェクトや領域ごとにチームに求められる人材の行動様式/働き方、ほかのメンバーや利害関係者との関係性、勤務場所、チームの特性や規模、必要なITスキル、ビジネス・スキル、さらには価値観や意識などを総合的に判断してIT人材像を特定するアプローチ”※5
つまり、ITスキルのみならず、実務遂行に必要な要素をさまざまな観点から分析してとりまとめ、プロファイルとして定義するという考え方です。プロファイリングベースの人材戦略では、従来のスキルベースの人材戦略で見つけることのできなかった人材を発掘できる可能性があります。DX対応型の人材は「イノベーションを生み出す人材」とも言い換えられるため、従来型の人材モデルとは異なるスキルマップを持っているケースが多いです。こうした人材は、ジョブ型人材の枠組みから外れてしまう可能性があります。そのため、以下のような人材戦略で隠れた人材を見つけ出していく必要があるでしょう。
・プロジェクトの遂行に必要なプロファイルを定義する
・そのプロファイルを持つ人材をジョブ型人材のモデルに当てはめながらピックアップする
・ピックアップした人材でプロジェクトチームを組成する
3. 人材不足対策の限界をアウトソースで解決
多くの企業では、IT人材不足について「育成」「採用」「リスキリング」「ローテーション」で対応しています。しかし、前述のように大手企業でも人材の不足感が強いことから、こうした施策も十分ではないことが伺えます。
したがって、今後は「アウトソース」の活用も視野に入れるべきです。実際に多くの企業がアウトソースで人材不足に対応しています。
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の調査レポートによれば、IT人材不足対策として「外部リソースの活用」を挙げた企業は、全体の44%に上っています。※6
また、東京都デジタルサービス局でも高度専門人材の確保を「特定任期付職員」「会計年度任用職員」で行う方針があること示しています。※7
特定任期付職員や会計年度任用職員は、一般企業に例えると「契約社員」などに該当するため、外部の人材と考えることもできるでしょう。このように、アウトソースはすでにIT人材不足の主要な解決策となっているのです。
一般的にアウトソースは、定型業務や下流工程を担う人材の不足に対応する施策でした。しかし、人材不足が加速する今後は、専門性の高い業務についてもアウトソースを検討すべき段階にきています。
4. まとめ
ここでは、最新のIT人材戦略について解説してきました。近年、より一層IT人材の要件は複雑化・高度化しています。また、トレンドの移り変わりが激しく、既存の雇用形態のみでは対応しきれないことも多いでしょう。よって、IT人材戦略においては、積極的なアウトソース活用も視野に入れると良いでしょう。
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参考:
※1 日本IT団体連盟 デジタルトランスフォーメーションを支えるIT人材育成の好循環に向けて P4
https://www.itrenmei.jp/files/Whitepaper_ITren_ed_workforce_20220201.pdf
※3 ※6 日本情報システム・ユーザー協会 企業IT動向調査2022 速報値
https://juas.or.jp/cms/media/2022/01/it22_1.pdf
※4 アクセンチュア 業種別・企業規模別のDXの状況と課題が明らかに 〜DXサーベイの調査・分析結果から見る日本企業の現状
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/local/dxsurvey
※7 東京都デジタルサービス局 デジタル人材の確保・育成
https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/hr/
出典:
※2 令和3年版 情報通信白書 第1部
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html
※5 Gartner 2020年以降に向けたIT人材戦略に関する展望を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20200303
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