オンラインとオフラインの
融合「OMO」の
概要・
メリット・
オムニチャネル
との違い
今、ECの新たなトレンドとして「OMO」が注目されています。OMOは、オンライン・オフラインを融合しつつ、顧客行動や顧客体験を重視した販売戦略です。ここでは、OMOの概要やメリット、オムニチャネルやO2Oとの違い、OMO構築のために必要なシステムなどについて解説します。
1. OMOとは?
まず、OMOの概要と歴史について解説します。
OMOの概要
OMOはECにおける戦略のひとつです。正式名称は「Online Merges with Offline」であり、もともとは「オンラインとオフラインの融合(または融合した社会、状態)」を意味します。
EC戦略としてのOMOでは、顧客体験の最大化を目指し、オンラインとオフラインの顧客接点(チャネル)を融合させ、行動データを蓄積していきます。また、チャネルが融合することで、顧客は時間や場所にとらわれずに製品・サービスを購入できるようになります。こうした自由度の高さは顧客体験を高め、顧客満足度の向上につながり、リピーターの育成やファン層の形成、売上増大などが期待できるというわけです。
OMOの歴史
OMOは、Google Chinaのトップを務めた李開復(リ カイフ)氏によって提唱されたと言われています。2017年、李開復(リ・カイフ)氏が英経済誌「The Economist」の年末特集号に寄せたコラム「Meet OMO sapiens」で、OMOの概念を発表したことで知られるようになりました。ただし、同氏がOMOの概念を発表する以前から、中国ではオンラインとオフラインを区別しない販売戦略が採られていました。
日本では2019年ころから徐々に認知されるようになり、アパレルやコスメ業界などを皮切りに活用が進んでいます。
2. OMOが注目される理由
OMOは、国内外のEC業界、特にBtoC領域の物販において注目されています。その背景には、次のような理由が存在しています。
オンラインでの情報資産形成が可能に
スマートフォンをはじめとしたモバイルデバイスの普及、Wifiの整備、IoTの発達によって「オフラインの行動データ」を「オンラインの情報資産」として収集可能になりました。OMOではオンランとオフラインの区別をなくし、どちらの行動も情報資産として活用します。そのためには、大量のデータ収集・蓄積をリアルタイムに行える仕組みが必要です。したがって、モバイルデバイス・ネットワーク・IoTといった先端技術の成熟は大きな追い風になります。
物理的な制約を受けない意思決定
さらにモバイル決済の普及が進んだことで、顧客の多くは自らの手元で、時間や場所に関係なく「意思決定(購入)」を行えるようになりました。これは、認知・検討・意思決定をそれぞれ別の場所で行えることを意味します。実際に、「実店舗で見つけた気になる商品を、ECサイト上で購入する」という「ショールーミング」が一般化しつつあります。ショールーミングはOMOが想定する顧客行動のひとつです。また、ECサイトと実店舗間で購入データを紐づけ、新たな顧客体験の提供(商品にスマホをかざすとユーザーレビューが表示されるなど)が可能になるという副次的なメリットもあります。
オンラインシフト
モバイルデバイスとインターネットの普及により、オンラインでの消費行動を増やす顧客が増えています。これにコロナ禍の自粛が加わり、オンラインシフトが加速しています。
モバイルデバイスとインターネットを使いこなす人々にとって、オンラインでの行動はすでに生活の一部です。したがって、オンラインとオフラインの間に線引きを設けること自体がナンセンスだともいえます。今後はOMOが提唱するように、オンライン・オフラインの垣根を取り払ったアプローチが主流になっていくのではないでしょうか。
「顧客体験」が最重視されるビジネス環境
「モノ自体の価値」で差が付きにくい時代になり、企業は「コト(=体験)」で価値を提供することに注力し始めました。顧客体験の向上は、あらゆる分野で重要課題とされています。OMOは顧客目線を起点としており、顧客体験の向上が至上命題です。こうした考え方が、現在のビジネストレンドとマッチしていることも、OMOが注目される理由のひとつかもしれません。
3. O2O・オムニチャネルとの違い
OMOと混同されがちな概念に「O2O」や「オムニチャネル」があります。いずれもECにおいては重要な概念であるものの、それぞれ目的やアプローチが異なります。
O2Oとの違い
O2Oは「オンラインからオフラインへの誘導」を柱とする戦略です。最終的に顧客がたどり着くのは「オフライン」であり、オンラインはオフラインへの導線として存在しています。公式サイトから実店舗で使用可能なクーポンを発行する施策などは、O2Oの典型例と言えるでしょう。また、O2Oではオンラインとオフラインが「分断」されており、それぞれ「独立」した状態にあります。
これに対しOMOは、オンラインとオフラインの垣根をなくすことを旨とします。前述のクーポンの例をOMOに置き換えると、「ECサイト、実店舗の両方で使えるクーポンを発行する」という施策になるでしょう。
オムニチャネルとの違い
オムニチャネルとOMOは、一見とても良く似ている戦略です。また、「考え方の起点(企業目線ではなく顧客目線)」や「ゴール(顧客体験の向上)」も共通しています。ただし、顧客へのアプローチにおいて大きな違いがあります。
オムニチャネルは複数のチャネルを使い、チャネル間のシナジーで顧客体験を向上させるというアプローチが主体です。OMOのように「オンラインとオフラインの融合」がベースとなるわけではありません。したがってチャネル同士は連携していても、オンラインとオフラインは独立・分断されていることもあります。OMOでは、オンラインとオフラインのシームレスな連携と、「デジタルとリアルを意識させない体験の提供」を旨とします。この点が、2者の大きな違いです。
4. OMOのメリットと具体例
OMOのメリットとしては、次の3つが挙げられます。
OMOのメリット
●販売機会や商機逸失の低減
OMOではオンライン上での注文を、「実店舗を利用したときと同じ感覚で」受け取ることができます。顧客はどこにいても製品・サービスの購入・受け取りができるため、場所や時間による販売機会、商機逸失が最小化されます。
●顧客行動データの集約による正の循環
OMOの核となるのは、オンラインとオフライン双方から得られるデータの統合による「真のニーズ」の発見です。モバイルデバイス、無線ネットワーク、IoTなどを組み合わせて購買行動データを集約・分析していくことで「顧客が本当に欲しいもの」の輪郭が浮かび上がってきます。また、真のニーズをもとにECサイトや実店舗をアップグレードしていくことで、さらに顧客体験と満足度が向上し、売上増大が期待できます。こうした正の循環を生み出せることも、OMOの強みのひとつです。
●EC×実店舗の連携によるLTV最大化
前述の正の循環が続けば、顧客はオンライン・オフライン双方で購買頻度を増やしていくことでしょう。つまり「LTV(顧客生涯価値)の増大」が期待できるのです。LTVが高い顧客はファン層の一部となり、継続的な収益をもたらす存在です。
海外で成功事例が多数存在
OMOは、海外の成功事例が多いことでも知られています。しかし、国内でも徐々に具体的な事例が増えてきました。そこで、国内外の事例を簡単に紹介していきます。
●中国「Alibaba出資の盒馬鮮生」
Alibabaが出資する中国の生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマー)」はOMOの典型的な成功事例として知られています。盒馬鮮生は、OMOの適用により「注文から30分で品物が届く」という顧客体験を提供しているスーパーです。実店舗で商品に添えられたバーコードを読み取ると商品情報が表示されます。また、読み取った商品をECサイトで注文すると別の実店舗から商品が発送され、顧客の手元に届くという仕組みです。
●国内「EC併設型の実店舗」
国内のある大手百貨店チェーンA社では、ECを併設した大型の実店舗を設置し、新たな顧客体験を提供しています。この実店舗では、あえて品数と売り場を小さくし、ショールーム型の店舗をいくつも内包する形態を採用しました。展示商品は戦略的なアイテムや限定商品が中心であり、店内にはタッチパネル型のデジタルサイネージを設置しています。顧客はデジタルサイネージを見ながらECサイトで商品を購入するという「ショールーミング」を体験できるわけです。
●国内「デジタルネイティブを対象としたOMO体験の提供」
次世代ニーズの発掘のために、実験的にOMOを開始する企業も現れています。国内で複数の商業施設を展開するB社では、ショールーミングを想定し「OMO型購買体験」を提供するイベントを開催。同イベントでは、商品に添付されたQRコードをスマートフォンで読み取ることで、同社が運営するECサイトへ接続される仕組みを採用しています。読み取った商品はそのままECサイトで購入可能です。デジタルネイティブ世代が消費の中心を担う今後は、こうした実験的な試みも増えていくでしょう。
5. OMO構築に必要なシステム
OMO構築では、ショールーミングを想定し、ECサイトと実店舗をシームレスに連携させる仕組みが必要です。具体的には、「ECシステム(フロント、バックオフィス)」「モバイルアプリ」などが挙げられます。
ECシステム(フロントシステム)
WEBサイト構築・商品管理・在庫管理・コンテンツ管理・注文管理・クーポンやキャンペーン管理など、ECサイト運営に必須となる機能を統合したシステムです。ECシステムは、スクラッチ開発やパッケージ導入によって構築する方法が一般的でしょう。
ただし近年のECは、日進月歩で新しいトレンド・技術が生まれている分野です。そのため、数年おきに機能追加を必要とする可能性があります。さらに、グローバルサイトの構築や新ブランドサイトの立ち上げなど、ビジネスの拡大をカバーできる仕組みであることも重要です。
こうした事情を考慮すると、こうした事情を考慮するとバージョンアップやオプション契約での機能追加が可能な製品を選ぶべきでしょう。おすすめは、グローバルな商慣習・ベストプラクティスを集約した「クラウド型のECプラットフォーム」です。
大手ベンダーのクラウド型ECプラットフォームであれば、世界中の商慣習やベストプラクティスをカバーしつつ、高品質なECフロントの構築をスピーディーに行えるでしょう。
ECシステム(バックオフィスシステム)
前述のフロントシステムと連動し、ECサイトのバックオフィス業務を効率化・自動化するシステムです。具体的には、受注管理・在庫管理・ピッキングリスト・配送管理・入金管理などが主な機能となります。ショールーミングを想定したOMOでは、スマートフォンからの注文をECサイトで受け付け、さらに在庫を実店舗に配送するといった工程が発生します。バックオフィスシステムは、これら「モノ・カネ・情報」の移動を効率的に行い、OMOを下支えするシステムです。
ショールーミングでは、実際の販売がECサイトに集中しがちです。したがって、EC業務の効率を高める仕組みが必須となります。また、日本の商習慣にマッチし、複数のECサイトを一括で管理できるシステムが適しています。
VINXでは、メジャーなECフロントシステム「Salesforce Commerce Cloud」とシームレスに連携可能な独自のバックオフィスシステム「Commerce-Gate」を提供しています。Commerce-Gateならば、日本の商慣習に対応しつつ、ショールーミングのベースを構築可能です。
モバイルアプリ
ショールーミングを想定したOMOでは、モバイルアプリを起点とした決済・情報収集などが基本です。したがって、「会員証機能」や「EC・実店舗のポイント管理機能」「店舗検索機能」「購入履歴管理機能」などを持ったモバイルアプリが必要です。
6. まとめ
この記事では、OMOの概要やメリット、事例、構築に必要なシステムなどを解説してきました。OMOはオンライン・オフライン双方で発生する購買行動を統合し、顧客体験の向上へとつなげていきます。オンラインシフトが急速に進む今、国内でも、OMOを実践フェーズに落とし込む企業が増えています。ショールーミングを想定したOMOの構築を目指すのであれば、まずはクラウド型ECシステムの選定から始めてみてはいかがでしょうか。