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小売の最新ビジネスモデル「D2C」の
概要と必要なシステム

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近年、右肩あがりの成長を続けるECの分野では、あらたなビジネスモデルが次々に登場しています。そのひとつに製造者(メーカーやSPAなど)と消費者をダイレクトに結ぶ「D2C(Direct to Consumer)」があります。D2Cは欧米で発祥し主にアパレル、コスメ、嗜好品などの分野で用いられてきました。しかし今後は、小売業界全体に普及していく可能性を秘めています。ここでは、D2Cの特徴、メリット、構築に必要なシステムの具体例などを紹介します。

1. D2Cとは?

まず、D2Cの歴史、特徴などについて解説します。

D2Cの歴史

D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、「製造者(メーカーやSPAなど)がダイレクトに消費者と取引(販売)を行う」ビジネスモデルを指します。D2Cは、2010年頃に米国で誕生したと言われています。
消費者を相手にビジネスを展開しているため、厳密に言えばB2Cの一部と考えることができるでしょう。

D2Cの概念と特徴

D2CはそれまでのB2Cとは異なる概念です。一般的には「製造直販(SPA)」と同じものと考える人が多いかもしれません。たしかに、外面上は旧来の製造直販(SPA)と見分けがつきにくいことがあります。しかし、実はいくつもの工夫が盛り込まれており、ECの収益力やブランド力を高められる新しいビジネスモデルなのです。以下は、D2Cの特徴を整理したものです。

ダイレクトアプローチイメージ

●ダイレクトアプローチ
一般的な製造/小売りのビジネスモデルでは、「企画」「生産」「販売」など役割に応じて専門業者が存在し、それぞれが中間マージンを積み重ねながら、製品を世に送り出します。一方、D2Cでは企画、生産、販売のすべてを製造元が担うため、中間マージンの積み重ねが発生しません。したがって、安く良質な製品を、ダイレクトに消費者のもとへ届けることができます。

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●デジタルネイティブにアプローチした戦略
D2Cを導入している企業は、「デジタルネイティブ世代」を主なターゲットにしています。デジタルネイティブ世代とは、PCやインターネット、スマートフォンに慣れ親しんだ層です。デジタルデバイスとインターネットの活用に抵抗がないこの世代には、ECを主軸とした販売チャネルがマッチします。また、リアル店舗は「展示場」「現物を確認する場所」として機能します。

さらにECとリアル店舗を併用し、「リアル店舗で現物を確認し、気に入ったものはECで購入する(ショールーミング)」「ECで見つけた製品をリアル店舗で確認し、購入する(ウェブルーミング)」といった行動傾向を想定していることも、D2Cの特徴のひとつです。

●イミ消費
D2Cを展開する企業は、販売品目をあえて少数に限定しているケースが珍しくありません。それと同時に、「ライフスタイル」「文化」「価値観」も提案する傾向が強いようです。これは、ターゲットを絞って世界観やコンセプト、ブランドメッセージを明確にするためだと言われています。なぜこのような戦略をとるかと言えば、D2Cでは「イミ消費」に価値を見出す層をターゲットにしているからです。

イミ消費とは、端的に言えば「社会的・文化的な価値や世界観への共感」です。アパレルブランドであれば、製品の機能性や外観に加え、その製品を身に着けて過ごす生活(ライフスタイル)や余暇の過ごし方(イベント、旅)などを提案することで、共感を促します。

●売り手と買い手の垣根を超えた共創性
D2Cでは、消費者との対話を重視します。具体的には対話を通じて「共にブランドを作り上げるチーム」としての意識付けを行う傾向が強いです。これは、ファン層を形成するとともに「迅速かつ柔軟な製品開発」にも役立つと言われています。SNSなどから寄せられる要望・提案を柔軟かつ迅速に商品開発に取り入れ、「今、欲しいと思ったものが具現化される」という体験を提供するわけです。

●パフォーマンス・マーケティングの活用
効果が曖昧な広告を使用せず、投資対効果を追求したマーケティング戦略を活用することも、D2Cの特徴です。具体的には、自社の情報チャネルのみを使い、広告費を最低限にとどめつつ、売上を上げる施策をとることが多いようです。

2. なぜ今D2Cなのか?

オンラインシフトイメージ

D2Cは、ここ3年ほどで急速に注目されるようになりました。その背景には、次のような理由があります。

オンラインシフト

スマートフォンはすでに「一人に一台」と言っても過言ではないほど普及しています。
また、コロナ禍において、リアル世界での感染リスクを回避しつつ購買意欲を満たすために、オンラインへ投下する時間が増えています。

現代の消費者は、デジタルデバイスとインターネットを使い、自らの手元で意思決定プロセス(興味関心・情報収集・比較検討・購入決定)の大半を行うことができます。スマートフォンやPCで複数のECサイトをめぐるだけで、意思決定に必要な情報が集まるからです。このようにオンラインシフトが進む現代では、D2Cのようにオンラインを主軸としたブランディング・マーケティングが功を奏します。

消費トレンドの変化

現代は、大量製造・大量消費が主体でモノ自体に価値があった「モノ消費」から、体験を重視する「コト消費」を経て、コンセプトや世界観を共有する「イミ消費」の時代に突入しました。消費者は製品の性能や見栄えだけではなく、ブランドが提案するライフスタイルや世界観、コンセプトを含めて購入の判断を下します。こうした消費トレンドの変化が、D2Cのビジネスモデル(少数の製品+コンセプトと世界観の提案)とマッチしているのです。

ECの拡大

経済産業省の調査※1によれば、ECの市場規模は右肩上がりで成長中であることがわかります。特にBtoC市場では物販系の伸びが強く、2018-2019年比で8%※1強の成長を遂げています。ECの中でも物販系に強いビジネスモデルであるD2Cが注目されるのは、当然の流れかもしれません。

※1:経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html

直営ECサイトでの購入が一般化

d2cグラフ

株式会社売れるネット広告社の調査によれば、2025年までにD2C市場は3兆円に達する見込みとのこと。※2
もしこの数字が実現すれば、たった10年で約3倍の市場規模に達することになります。(2015年のD2C市場は約1兆3300億円規模)
これは、これまでECモールの中で購入していた層が、直営ECでの購入に移行していくためと考えられます。イミ消費への移行が進むにつれ、ブランドの世界観やストーリーをリアルに、ダイレクトに感じやすい直営ECサイトの訴求力が高まるというわけです。こうした消費トレンドの変化を踏まえると、企業には「顧客とダイレクトにつながるビジネスモデル構築」が求められることがわかります。

※2:ECのミカタ
https://ecnomikata.com/ecnews/27562/

SNSによるデジタルマーケティングの台頭

SNSイメージ

デジタルマーケティングの台頭により、視覚的なアピールに特化したSNSがマーケティングツールとして重用されています。また、SNSで影響力を持ちやすい「インフルエンサー」や「エバンジェリスト」は、ブランドの世界観やコンセプトを代弁し、購買意欲を喚起する役目を担っています。こうした「SNS⇒拡散者・代弁者⇒消費者」という導線は、D2Cの特徴である「ダイレクトアプローチ」「イミ消費」と親和性が高いため、現代のマーケティングトレンドにマッチしたビジネスモデルと言えます。

3. D2Cと従来のビジネスモデルの違い

では、D2Cと旧来のビジネスモデル(メーカー直販やB2Cなど)には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

D2Cと製造直販(SPA)の違い

製造から販売の全工程を製造元が担当する、という意味では同じです。しかし、D2CではCRMやECといったITツールや、SNS・MA・オウンドメディア・動画サイトといったデジタルマーケティングを駆使し、「ブランドイメージと顧客体験」を重視した顧客目線の戦略を採ります。また、主な販売チャネルはECであることも特徴のひとつです。一方、旧来の製造直販(SPA)は、「流通、在庫保管コストの削減」が主目的であり、主な販売チャネルはリアル店舗です。

D2CとB2Cの違い

前述したようにD2CはB2Cの一形態と言えます。また、D2Cが「どのように届けるか」を重視した方法論であるのに対し、B2Cは「誰が誰に届けるか(誰と誰の取引か)」をあらわす言葉、という違いがあります。

4. D2Cのメリット

D2Cのメリットは次の4点に集約されるでしょう。

ブランドイメージの育成が容易

D2Cでは、販売チャネルのみならずSNSや公式サイトを通じて、作り手が想定する世界観やコンセプトを消費者に直接届けることができます。これは、ブランドイメージの育成にかかる広告宣伝費の節約にもつながります。

独自の販売・情報チャネルを保有できる

D2Cは独自の販売チャネルや情報チャネルを保有でき、自社の戦略を素早く流通・マーケティングに反映させることができます。これは、中間マージンの削減や情報伝達コストの削減、ファン層の形成など複数の効果をもたらします。

低価格化が容易で利益率が高い

中間マージンの積み重ねを廃しているため、低価格化が容易です。良質な製品を低価格で提供できるため、市場での競争優位性を維持しやすくなります。また、低価格路線を採用したとしても、一定以上の利益率を確保しやすいため、安定した経営基盤の構築にもつながります。

消費者ニーズとトレンドを迅速に反映

消費者交流イメージ

D2CはSNSや公式サイトを通じて、消費者とダイレクトに交流しつつ「共にブランドを創る」ことを旨としています。加えて、企画・製造を単独で行うため、「消費者からの要望をすぐに製品に反映させられる」という強みがあります。

5. D2C構築に必要なシステム

ECシステムイメージ

最後に、D2C構築に必要なシステムを紹介します。
D2CはECシステムを核とし、さまざまな周辺システムとの連携で成り立つ仕組みです。代表的なシステムとしては「ECシステム(フロント、バックオフィス)」「CRM」「MA」「基幹システム」が挙げられます。

ECシステム(フロントシステム)

お客様がふれるWEBサイトのフロント構築・商品管理・在庫管理・コンテンツ管理・注文管理・クーポンやキャンペーン管理など、ECの基本機能を備えたシステムです。近年は独自開発による構築ではなく、大手ベンダーのパッケージサービスを利用する手法がトレンドになっています。大手ベンダーのパッケージサービスには、グローバルな商慣習やベストプラクティスが集約されているため、高品質なECフロントの構築が迅速に行えます。グローバルなビジネストレンドに沿ってD2Cを展開したい場合には、必須のシステムです。

ECシステム(バックオフィスシステム)

前述のフロントシステムと連動し、主にバックオフィス業務を効率化・自動化するシステムです。受注管理や在庫管理・ピッキングリスト・配送管理・入金管理などEC運営における「モノ・カネ・情報の管理」を効率化します。

バックオフィスシステムの選定では、「日本の商慣習に対応しているか」を重視すべきでしょう。特に「注文の一部キャンセル・返品」や「サイズ・カラーの途中変更」「分割配送」「同梱管理」などは、海外のベンダーでは対応していないことがあるため、注意が必要です。また、前述したECフロントと連携可能か否かも重要な選定ポイントになるでしょう。

CRM

顧客情報の一元化を担い、過去の取引履歴からニーズを把握したり、キャンペーン作成のヒントを得られたりといった効果が見込めます。ダイレクトにつながった顧客の情報を一元管理するために必須のシステムと言えるでしょう。

MA

マーケティング業務を自動化しつつ、顧客それぞれに独自のアプローチを行う「One To Oneマーケティング」の機能を提供します。近年は、AIとの組み合わせにより、より最適化されたアプローチが可能になりました。例えば、個人のセンス(感性)を学習するAIと組み合わせることで、顧客それぞれの好み(デザイン、色など)を予測し、レコメンド商品を提案する「パーソナライズドレコメンデーション」も可能です。

基幹システム

EC運営企業の経営資源を一元管理するシステムです。ECシステムと連携しながら、在庫・購買・販売・商品別の採算性・売上と利益などを管理します。D2Cの構築を想定する場合は、販売物流に特化した基幹システムがおすすめです。

6. まとめ

この記事では、D2Cの概要や特徴、メリットを解説しながら、構築に必要なシステムを紹介してきました。アパレル業界を中心に広まったD2Cは、B2Cの中心的な存在になる可能性を秘めています。リアルの事情に左右されない販売力を確保できることは、企業にとって大きな強みになるからです。

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